こんにちは、ザビリオです。
私は初めて購入したカメラがSIGMA DP2 Merrillでした。
現行のfpは別ですが、当時のSIGMAのカメラはFoveonセンサーという特殊なセンサーを搭載していることに特徴があり、その頃からFoveonのカメラの楽しさに魅入られています。
今回は、今でも私が愛用しているdp1 Quattroについてレビューしてみたいと思います。
自分のブログにしては長い記事になっているのですが、dp1 QuattroとFoveonに興味がある方にお読みいただけると幸いです。
Foveonセンサーとは
RGBの3色を1画素で処理する夢のセンサー
通常のデジタルカメラは、赤青緑の色を4つの画素で取得(赤:青:緑が1:1:2の画素に対応)して処理するベイヤー方式という方式が採用されています。
それに対し、Foveonセンサーは1画素の垂直方向で3色を全て取得することができるため、偽色が発生せず、解像感や階調の高い画像が得られるとされています。
暗いところにめっぽう弱い、鳥眼センサー
これだけ聞くとFoveonは夢のセンサーのように見えるのですが、弱点もあります。
前述のとおり垂直方向に色を取得するセンサーが積層されているためか高感度耐性が非常に弱いという点です。
そのため、光の少ない箇所(暗いところ)で手持ち撮影をしようとすると、ノイズが多く載ってしまうか、シャッタースピードが遅くなって手持ちでは殆ど撮影できなくなってしまいます。それによって暗所では手持ちでまっとうな写真を撮ることがほぼできないという、常用するには致命的な弱点を持っています。
このことから、Foveonセンサー搭載機はカメラを据えてじっくり撮影する人向けのカメラとなるわけです。
弱点をカバーして人を魅了する描写力
ただ、SNSなどを見ていると、じっくり撮って得られた写真の持つ独特の解像度と階調を経験して一度クセになってしまったがためにFoveonのカメラから抜け出せなくなってしまった人が多数いるという事がわかります。それほどに描写力には魅力があるセンサーだということができると思います。
DP Merrillとdp Quattro
Foveonセンサーが1画素の垂直方向で3色の情報全てを取得する事ができるセンサーであるということを前項で述べました。
そんなFoveonセンサーにも、世代によって特徴があったりします。
大きく分けると【1:1:1】と、【1:1:4】の違いです。これだけでは「なんのこっちゃ」という感じになるため、詳しく書いてみようと思います。
1:1:1のMerrillセンサー
Merrillセンサーと書きましたが、実際には「DP Merrillシリーズ以前のFoveonセンサー」が【1:1:1】のセンサーを搭載したカメラです。
ここでいう1:1:1とは、RGBの色を受け取るセンサーの数の比です。
先に掲載した画像のとおり、Foveonセンサーはベイヤーセンサーと異なり、縦方向でRGBすべての色を検出する構造を持っています。
そして、この右側の図のとおり、縦方向に並んだRGBを検出する素子の数の比が、R:G;B = 1:1:1であるのがMerrillセンサー以前のFoveonセンサーです。
1:1:4のQuattroセンサー
一方、【1:1:4】は、先の説明と同様にR:G:B = 1:1:4の比で配置されているのがQuattroセンサーです。このQuattroセンサーが2024年現在で最も新しい世代のFoveonセンサーになります。
Quattroセンサーについては、SIGMA公式サイトで公開されているsd Quattroのカタログに判りやすい概念図が示されていたため、引用します。
最上層(トッププレイヤー)に配置されたBlue層のみが細かく分割され、ミドル・ボトムレイヤーに位置するGreen、Redの層はその1/4の画素数で配置されています。
これを成立させる詳しい理屈はよく理解できなかったのですが、FoveonのセンサーはB層でもRとGの情報をある程度取り込むことができるため、明度・彩度情報をトップ層で読み取り、ミドルとボトムのレイヤーの情報と掛け合わせて明度・彩度・色相環の情報を完成させる(?)というような話でした。
詳しくは2014年のCP+(この記事更新時点の10年前!)で、SIGMAの山木社長がQuattroセンサーの構成について説明してくれていますので、そちらを御覧頂いたほうが公式な情報が手に入ると思います。
10年前の映像ですが、熱を込めて説明する山木社長のプレゼンを聞いているとFoveonのカメラを持って出かけたくなります笑
Quattroセンサー搭載のレンズ固定式カメラがdp Quattroシリーズ
前項でFoveonのQuattroセンサーを紹介しました。dp Quattroシリーズは、FoveonのQuattroセンサーを搭載したレンズ一体型カメラのシリーズになります。(レンズ交換式はsd1 Quattroとsd1 Quattro H)
dp Quattroシリーズには通し番号でdp0 ~ dp3の4種類が存在します。
通し番号の小さいものほど焦点距離が短く、以下の表のとおり対応しています。
カメラ | dp0 | dp1 | dp2 | dp3 |
焦点距離 (レンズ) | 14mm | 19mm | 30mm | 50mm |
焦点距離 (35mm判換算) | 21mm | 28mm | 45mm | 75mm |
開放f値 | f4 | f2.8 | f2.8 | f2.8 |
画角の特徴 | 超広角 | 広角 | 標準 | 中望遠 |
dp1 Quattroについて
ここまで書いてようやくレビューらしいことを書き始めます笑
私が使っているのはdp Quattroシリーズのうち、広角レンズを搭載したdp1 Quattroですので、この記事ではdp1 Quattroのレビューをしていきます。
先の表から分かるとおり、dp1はdp0よりも狭い画角ではあるものの、開放f値が小さくボケも楽しめるカメラと言えると思います。
当然広角レンズゆえにボケが出にくい焦点距離ではあるのですが、最短近いところで対象に寄って撮影するとボケを楽しむことができます。
換算28mmという画角もiPhoneなどのスマホカメラでよく使われる画角で、“暗くさえなければ” 広い範囲で使いやすい画角のカメラだと思います。
dp1 Quattroの良いところ
Foveonの質感表現を楽しめる最新機種
良いところの1つ目は、Foveonセンサーの最新機種であるという点です。
1つ前の世代であるMerrillセンサーも1:1:1構造という意味では最新機種で、どちらも良さがあるのですが、CP+2014の動画でもベイヤーと比べた際に高い解像感が得られるのはQuattroセンサーであると山木社長がプレゼンしています。(Merrillは3,000万画素相当、Quattroは3,900万画素相当)
現在SIGMAが新型Foveonセンサーの量産に苦戦している以上、最新のFoveonの質感表現を楽しむにはQuattroが良いのではないかと思います。
画角と開放f値のバランスが良い
dp Quattroシリーズについての項でも触れたとおり、dp1 Quattroはf2.8の開放f値を持つ選択肢の中では最も広角側のレンズを持つ機種です。
「三脚前提」または「十分な光のある日中のみ使う」という前提のもとではdp0がより広角でダイナミックな写真を撮ることができるのですが、dp1の方が画角とf値のバランスが撮れており、「Foveonを1台持って行く」という状況では使いやすい選択肢になると思っています。
デザインが格好良い
dp1 QuattroはそれまでのDPシリーズとは異なり、極端に奇抜な形をしています。
Merrillシリーズまでは無骨な箱型で、革製のボディースーツなどを装着しないとデザイン的には格好良いとは言いにくい外観でした。
一方、Quattroシリーズはデザインが一新され、当然好みには寄りますが、(LCDビューファインダーを装着しなければ)ボディースーツなどを装着しなくても格好良いと思えるようなデザインになっています。
LCDビューファインダーを装着したとしても、鳥井工房から発売されているLCDビューファイダーケースを装着すればデザイン的には改善し、持ち出したくなるようなデザインが特徴だと思います。
鳥井工房のビューファインダーケースは非常に優秀で、純正の状態ではストラップでぶら下げる際のカメラの定位置が安定しない問題や、撮影時に背面のキャップがブラブラして邪魔になる問題も難なく解決してくれます。
LCDビューファインダーとの併用が楽しい
前項にも登場しましたが、dp Quattroシリーズには別売りパーツでLCDビューファインダーという部品が用意されています。dp Quattroシリーズ自体は生産終了されてしまいましたが、LCDビューファインダーはfpでも使えるものなので、今でも生産されているのではないかと思います。
QuattroだけではなくすべてのDPシリーズにはEVFがなく、背面液晶だけで撮影領域を確認する形になります。LCDビューファインダーは、その背面液晶そのものをファインダーにしてしまえという力技パーツです。
EVFが当たり前の現状ではめちゃくちゃな話に見えるのですが、案外これが楽しいです。
カメラを固定する効果が得られるというのはもちろんなのですが、片目をまるまる包み込むような大きさのアイカップを覗き込むと、広い空間の中に拡大された背面液晶の画面が浮かび上がっていて、小さなEVFを覗くのとはまた違った没入感が得られます。
先に紹介したLCDビューファインダーケースと併せて使うと首からぶら下げた定位置も安定するほか、見た目も独特で持ち歩くのが楽しかったりします。
dp1 Quattroの悪いところ
dp1 Quattroの悪いところを書いていきます。DP Merrillの世代で良くないと言われた部分は改善されているのですが、弱点は弱点ということでQuattroの世代でも挙がる弱点は共通だと思います。
高感度耐性がまだ弱い
Quattroセンサーでミドルとボトムセンサーが低画素化したおかげで面積が広くなり、Merrillよりも高感度耐性が1段分改善したとされています。
ですが、Merrillでは実用できるISOが400と言われていたところがQuattroでは800まで上げられるようになったというものであり、夜の手持ち撮影で十分なレベルかというと、やはりまだ不十分だと感じています。(CP+2014の動画で山木社長もその点に触れています)
実際のところ、Quattroを持って旅行などに行く際には必ずベイヤーのコンデジなどを併せて持ち出して、夜の食べ物写真や友人との何気ない写真などはベイヤーのカメラで撮ることが多いです。
書き込みがまだ遅い
書き込み速度はCP+2014のプレゼンでも紹介されているのですが、ミドル・ボトムのレイヤーの画素を減らした効果により、Merrill世代と比べて解像度が増えたにも関わらず書き込み時間が半分に短縮されています。
ただ、それでも平均12秒が5秒になったということで、他のカメラと比べると待ち時間が長く感じるという点は弱点として残っているのではないかと思います。
Merrillユーザーとしては全くストレスにはならないのですが、はじめてのFoveonカメラの購入を迷っている方にとっては、「早い」という単語から連想する結果とは異なる結果になるので注意が必要だと思います。
電池の持ちがまだ悪い
先の好感度耐性、書き込み速度と同様に、電池の持ちについてもミドル・ボトムレイヤーの改善によりMerrill世代と比べて改善されたと言われています。
ただ、それでも(以下略)
EVFが欲しい
良いところで、LCDビューファインダーを使うことが楽しいということに触れました。
ただ、そうは言っても先に写真で示したカメラ本体+LCDビューファインダーのあのサイズ感は日々持ち歩くには大きいと言わざるを得ません。
コンデジとしてのコンパクトさが必要なタイミングにおいてはLCDビューファインダーを外して使うことになるため、いつでもビューファインダー付きで楽しめるというわけではありません。
小型でも良いので、カメラに最初からEVFが備わっていると嬉しいなというのが正直なところです。
まとめ
かなり長い記事になりましたが、dp1 Quattroを、改めてレビューしてみました。
Foveonセンサーとは、4画素を使ってRGBの情報を補完する通常のベイヤーセンサーと異なり、1画素でRGBを垂直方向に検知できるセンサーで、高感度耐性やバッテリーの持ちといった使いやすさの多くを犠牲にして質感表現に特化したセンサーです。
dp QuattroシリーズはFoveonセンサーをもつカメラ郡の中でも最も新しい世代であるQuattroセンサーを搭載しています。
1世代前のMerrillセンサーと最新世代のQuattroセンサーでは3層構造の構成が異なり、それぞれひと味違う良さがあるのですが、解像感・高感度耐性・省電力化など、多くの点でQuattroセンサーは弱点が改善されており、Foveonを楽しむには良いカメラだと思います。
Quattroシリーズの中でもdp1は2番目に広い換算28mmの画角と開放f値2.8を持ち、使いやすい広角レンズである程度のボケも楽しめるというバランスの良い位置づけのカメラだと思います。
多くの弱点故に汎用的とは言えないため、「旅行に持ち出す」というような局面ではベイヤーのカメラを併せ持つ必要があるのですが、Foveonセンサーが描き出す画像を見ると心を鷲掴みにされるのではないかと思います。
dp1 QuattroやFoveonのカメラが気になっている方のご参考になって、Foveonの信者さまが1人でも多く生まれてくれれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。